「答え」のみを求める
仕事をしていると、後輩から「答えを教えてください。」と言われることが多くなってきました。
質問されたケースにおける意見を答えることはできるのですが、これでは別のケースに応用ができず、質問を繰り返すことになると思うのです。
確かに、仕事を始めたばかりで業務に慣れていないときには、その場合に行ってほしいこと(結論)をそのまま伝えるようにしています。
仕事に慣れてもらうことや、経験が少ないと考える材料がないこと、が理由です。
しかし、少し仕事に慣れてきた後は、考え方を伝えるにとどめて、ケースに合わせて考えてもらうようにしています。
最初は、戸惑う人も多いですが、慣れてくると自分で考えて生き生き仕事をするようになります。
自分で判断すると自信も付きますし、より自分の仕事であるという責任感も増してきます。
一方で、ちょっと悩む課題にあたると、答えを求め続ける人もいます。
自分で考えて責任をとるのが嫌なのかもしれませんし、そもそも考えることがめんどうなのかもしれません。
せっかく時間を費やして仕事をしているのに、少しもったいないな、と思ってしまいます。
マークシート式試験の弊害かもしれない
想像ですが、試験(特にマークシート式)に向けた勉強に慣れているため、一刻も早く答えを得る習慣が身に付いてしまったのかもしれません。
マークシート試験対策では、過去問の問題と解答を繰り返す勉強がよく行われます。
試験のときも、答えは選択肢に示されており、自分で答えを考え出す必要はありません。
また、マークシート式は、時間が短いケースもあり、限られた時間で早く解答する能力が求められることもあります。
即答が求められている試験では、選択肢以外を考えることは有害です。
結果として、自分で考えることはしなくなります。
飛躍した考えかもしれませんが、限られた時間の中で速やかに答えを導くことにばかりに注力する試験は、人間の可能性を狭めているのかもしれません。
思考プロセスを身につけると想定外の事態にも応用可能
確かに、速やかに答えを導く能力が必要なこともあり、その能力を向上させることに意味はあります。
しかし、時間をかけて考えたり、思考プロセスを身に付けることも、大切なのではないでしょうか。
思考プロセスが自分のものとなれば、結果として答えに早くたどりけます。
想定外のケースに遭遇することはよくありますが、思考プロセスを身につけていれば、それなりの対応が可能です。
一方で、答えを安直に求めているだけでは、未知の課題の前では立ちすくんでしまいます。
どちらの能力も大切だと思いますが、最短で答えに行き着くことの比重が大きくなっていると感じます。
時間をかけることが軽視されがちな時代ですが、「思考結果」だけでなく、「思考過程」を学ぶことの大切さも意識してもらえるとありがたいです。
都内国立大学で、微生物や植物細胞を用いた研究を行った後、がん遺伝子やレトロウイルスの研究を行い、博士(医学)を取得しました。会社員生活を経た後、実定法から基礎法まで幅広く学び、法務博士(専門職)を取得しました。
大学院修了後には、戦略系経営コンサルティングファームに入社し、製造業やサービス業の、業務改革や新規事業開発に取り組みました。その後、創薬系バイオベンチャーで、がん治療に関する研究開発・事業開発を行いました。現在は、訴訟関連の法務サービスに従事しています。