科学実験には、直接的なものと間接的なものがある
科学実験の結果を聞くと、何かが証明されたかのように思ってしまいます。
しかし、実験結果には、何かを直接的に証明したものと、何らかの仮定を置いて実験結果の解釈をしているものがあります。
この2つを分けて考えると、1つの解釈にすぎないものを事実であると考えるリスクを減らすことができます。
新型コロナウイルス感染の検査
肉眼や顕微鏡下で直接検出できない
現在日々報道されている新型コロナウイルスですが、感染しているかを確認するために、ウイルスを直接見ている訳ではありません。
新型コロナウイルスの大きさは、直径0.1~0.2μm1とされており、大量に集めた場合は別にして、数個あるだけでは、肉眼で見ても顕微鏡で見ても確認できません。
PCR法で遺伝子RNAの有無を間接的に検査している
そこで、PCR2検査が用いられています。
PCR検査は、ウイルスそのものを見ているのではなく、唾液などの中に、新型コロナウイルスの遺伝子配列と部分的に同じ配列をもつRNA3がないかを確認しています。
これは、新型コロナウイルスに感染したならば、細胞内でウイルスが増殖し、細胞から唾液中に出てくることを前提としています。
そして、PCR検査では、ウイルスに相補的4な配列のDNAが大量に増えるかどうかを検討しているのです。
したがって、ウイルスに感染しているかを直接見ているのではなく、ウイルス感染していたならば検出されるであろうRNAがあるかを、間接的に検査しているのです。
感染していなくても同じ検査結果になる可能性
そこで、この検査のプロセスで、新型コロナウイルスに感染していない場合でも、新型コロナウイルスが含まれる場合と同様な結果を生じさせるものがあれば、PCR検査でDNAが大量に増えて陽性とされても、必ずしも新型コロナウイルスに感染しているとはいえないのです。
本稿では、具体的な可能性について検討しませんが、そのような可能性は十分に考えられます。
PCR検査の結果は、複数の解釈を可能とするものであり、解釈は1つに限定されないのです。
様々な可能性を考えてみる
科学実験には、直接的に何かを見るものと、間接的に何かを見るものがあります。
なかなか難しいことですが、どのような検査なのかに関心を持ち、検査結果が何を示しているかを考えることはとても大切です。
専門的知識がなくても、色々と考えることはできます。
例えば、新型コロナウイルスが唾液中に含まれる可能性としては、たまたま歯を触った指に新型コロナウイルスが付着しており、それが唾液中に含まれることも考えられます。
難しいと思って尻込みせずに、考えてみると、多くのことが見えてきます。
その視点の1つとして、直接的検査か、間接的検査を、意識してみてはいかがでしょうか。
都内国立大学で、微生物や植物細胞を用いた研究を行った後、がん遺伝子やレトロウイルスの研究を行い、博士(医学)を取得しました。会社員生活を経た後、実定法から基礎法まで幅広く学び、法務博士(専門職)を取得しました。
大学院修了後には、戦略系経営コンサルティングファームに入社し、製造業やサービス業の、業務改革や新規事業開発に取り組みました。その後、創薬系バイオベンチャーで、がん治療に関する研究開発・事業開発を行いました。現在は、訴訟関連の法務サービスに従事しています。