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話した通りに相手に伝わらない
話し手の期待と、聞き手の想像
仕事でも私生活でも、話した通りに相手に伝わらなかった経験を皆さんお持ちではないでしょうか。
話す側は、話したことを相手が自分の思った通りに理解してくれる、と思いがちです。
しかし、受け取る側は、話の内容を自分の知識レベルで理解してしまいますので、話す側の想定するレベルとずれがあると、うまく伝わらないことがあります。
また、話している内容に抜けがある場合、受け取る側は、話す意図を自分の想像で埋めてしまいます。
この埋め方が、話し手と一致していれば、コミュニケーションはうまく行くのですが、残念ながらズレが生じてしまうことがよくあります。
無意識の場合、伝わらない原因が分かりづらい
話し手が、ここは話さないと意識して話している場合で、話さなかった部分にズレがあった場合には、比較的解決は容易です。
しかし、無意識に話さなかった部分にズレがあった場合には、ズレになかなか気付かず、問題になるまで分からないため、お互いにわだかまりが残りやすくなります。
多くの場合、説明不足は指摘しづらく、分からないままに進めることになります。
コミュニケーションがうまく行かない原因
コミュニケーションがうまく取れない場合には、
・話し手が悪い場合、
・聞き手が悪い場合、
・話し手と聞き手の両方が悪い場合、
がありますが、どうしても自分は悪くないと考えてしまうのが厄介です。
日常生活のズレ
「暗くなったら窓を閉めておいて。」
日常生活でも、ちょっとしたことでズレが生じます。
例えば、「暗くなったら窓を閉めておいて。」と頼んで外出することがあります。
頼んだ方は、このくらい暗くなったらというイメージは言うまでもないと考え、何時になったら、などと具体的に示すことは少ないと思います。
そして、もう暗いと思って帰宅した時に窓が閉められていないと、「どうして閉めていないの!」となります。
頼まれた側が、「まだ明るいと思った。」と反論をしても、取り合ってもらえないことはよくあります。
言い訳をしている場合もありますが、明るさの感覚は人それぞれですから、本当に「まだ明るい」と思っていた可能性はあります。
具体的な時間を伝えることは難しいかもしれませんが、「暗くなると風が冷たくなってくるから、窓を閉めておいて。」と窓を閉める理由を伝えるだけでも、ズレは防げるかもしれません。
「ジュースを買ってきて。」
また、「ジュースを買ってきて。」と頼むときにも、ズレはよく生じます。
頼んだ側は「オレンジジュース」をイメージしていたのに、頼まれた側が「アップルジュース」を買ってきてしまうこともあります。
頼んだ側は、「オレンジジュースが好きなことを知っているはずだから、言わなくても分かるだろう。」と思ったのかもしれませんが、頼まれた側は、「ジュースなら何でもいい。」と思った可能性はあります。
また、「〇〇ジュースを買ってきて。」と具体的にお願いした場合に、「〇〇ジュースがなかったから、何も買って来なかった。」と言われることもあります。
頼んだ側としては、「喉を潤したいだけだから、〇〇ジュースがなければ別の飲み物でも良かったのに。」と思うこともよくあるでしょう。
相手や場合によっては、しっかり説明することも必要
言わなくても分かるだろうと思って、説明を省略してしまうことがよくあります。
一から十まで説明するのも、相手を信頼していないように見えますし、説明する時間がないこともあるでしょう。
なかなか難しいことですが、相手や場合に応じてしっかり説明することも必要です。
そして、何よりも大切なことは、相手が悪いとばかり思わずに、自分の説明が悪かったかなと、自身を省みることではないでしょうか。
ちょっと気を付けるだけで、コミュニケーションのズレを防ぎ、わだかまりを減らせるのではないかと思います。
なお、別稿では、想定する状況の共有は不十分場合について述べていますので、ご参照いただけますと幸いです。
都内国立大学で、微生物や植物細胞を用いた研究を行った後、がん遺伝子やレトロウイルスの研究を行い、博士(医学)を取得しました。会社員生活を経た後、実定法から基礎法まで幅広く学び、法務博士(専門職)を取得しました。
大学院修了後には、戦略系経営コンサルティングファームに入社し、製造業やサービス業の、業務改革や新規事業開発に取り組みました。その後、創薬系バイオベンチャーで、がん治療に関する研究開発・事業開発を行いました。現在は、訴訟関連の法務サービスに従事しています。