影響が出る境目「閾値」
少しでもあれば影響があるものと、ある程度以上の量があって初めて影響が表れるものがあります。
人体への影響を考えた場合、少量では影響はないものの、ある一定量を超えると影響が生じるものばかりです。
この境目の値を「閾値」と言いますが、これを意識して生活することはとても大切です。
身の周りの事例
例えば、水道水は塩素消毒されており、塩素を含んだものを私たちは飲んでいます。
塩素は強い毒性を持つ物質であり、高濃度では人体に有害です。
しかし、ある濃度以下ならば、塩素を含む水を飲んだとしても人体に有害ではないとされています。
言い換えますと、少しの量の塩素が体内に入っても、人体に有害とはされていないのです。
また、放射線も少量ならば、人体には影響がないとされています。
宇宙から飛んで来る放射線や、土壌から放出される放射線に、私たちは日々さらされていますが、それによって人体に悪影響は生じないのです。
そして、多くの人は、量に応じて影響が変わることを意識して生きています。
例えば、風邪薬を小さなお子さんに服用させる場合には、大人の量の半分などにします。
これは、体の小さなお子さんでも、大人の半分量なら悪影響はないと考えているのだと思います。
新型コロナウイルスの考察
これを、日々報道されている新型コロナウイルスに当てはめて考えてみます。
現在の警戒具合から考えますと、新型コロナウイルスが1個でも体内に入ったならば大変だと考えている方が多い気がします。
しかし、確率ゼロではありませんが、1個のウイルスが体内に入っても感染することはまずありません。
研究データはありませんので感覚的なものですが、数千、数万レベルでも感染せず、数億レベルになったならば感染し得るような気がします。
単にウイルス数のみ記載しましたが、いくつの細胞にウイルスが吸着する、1個の細胞に対して平均何個のウイルスが吸着し得るのかによって感染効率は変わってきますので、上記の数字はあくまで感覚的なものです。
1個の新型コロナウイルスが体内に入ったからといって感染しないならば、ウイルスを完全に取り除こうとする必要はなくなります。
アルコールで必要以上に手指消毒したり、買ったものを洗剤でごしごし洗う必要もなくなります。
水洗いでも99%以上のウイルスが取り除けるとのことですので、アルコールがなくても大丈夫なのです。
そして、完全でなくてもよいと分かれば、必要以上に恐れることもなくなり、安心して生活できます。
ゼロにしようと頑張らない
閾値があり、ゼロにしなくてもよいものが多いことを知れば、無理をする必要がなくなります。
現実の生活で、何かを除去することはほとんど不可能なのですから、頑張りすぎなくてもよくなります。
新型コロナウイルスに対しても、閾値を意識して生活してはいかがでしょうか。
都内国立大学で、微生物や植物細胞を用いた研究を行った後、がん遺伝子やレトロウイルスの研究を行い、博士(医学)を取得しました。会社員生活を経た後、実定法から基礎法まで幅広く学び、法務博士(専門職)を取得しました。
大学院修了後には、戦略系経営コンサルティングファームに入社し、製造業やサービス業の、業務改革や新規事業開発に取り組みました。その後、創薬系バイオベンチャーで、がん治療に関する研究開発・事業開発を行いました。現在は、訴訟関連の法務サービスに従事しています。